←前の日へ  ★★★★★  次の日へ→
2005年7月15日(金) はれ <96日目>
出発地:北海道利尻富士町
ファミリーキャンプ場ゆ〜に
現在地:北海道利尻富士町
ファミリーキャンプ場ゆ〜に 
走行距離:31.6km ★ 計:11657.1km 出費:693円
温泉:500円 食費:193円 


北海道・昆布干しがこれにて本当に本日終了。


暑いー。

そう思いながらも意地で寝続ける。もう時間を気にしなくていいもんね。でも、夜中ぴったり3時に目が覚めたのは自分でもびっくりした。暑くて結局8時に仕方なくモソモソとテントから脱出。

するとだ。

昨日はいっぱいあったテントが一つもなく、ぽつんとまた、わたしのテントがあるだけ。

置いてけぼりだね。まぁ、静かでいいんだけどさ。

スパゲッティを作って食べてからいつものお掃除開始。昨日の札幌から来ている奥さんとおしゃべり。奥さんと言っても多分、歳あんまりかわらないんじゃ?関西チックなノリなので、カラスねたや利尻ねたで話が弾む弾む(笑)。もう、今日には札幌に向かって帰られるとのこと。本当に楽しかったです、道中お気をつけて!

コテージのお掃除がまもなく終了というところでKさんからお電話が。今日も昨日のようなお手伝いをしてもらえないか、とのこと。おぅおぅ、いいですとも。もう掃除もほとんど終わりかけていたのでお昼前にKさんちへ。

昨日の乾燥機にかけた昆布を倉庫へ移動、と思ったら、若干乾ききってないものがあるらしく「2日干し」(今日も再びお日様に当てること)されるものと選別されて、外行きと、倉行きとに運んでいく。あれだけ天気がよかったのにそれでも一発で終了とはいかないのだ。

昆布はこれで出荷されるのだと思っていたのだけど、そういうわけでもないらしく、約2ヶ月かけて、プレスで皺を伸ばしたり、小さなエビや鳥の糞がついていればきれいに取り除いたりして、はさみや電動のこぎりのようなもので切り、1等、2等、3等に分け、箱詰めされ、そしてようやく出荷されるとのこと。

11、12月にロープに昆布のあかちゃんをくっつける→1〜3月は昆布に関してはゆっくりできる時間→4、5月は生で食べる昆布(佃煮とか用ね)を採る→6月下旬〜7月にかけて今の昆布干し(合わせて6〜9月頃はウニ漁)→天然昆布漁がある年は8月上旬くらいから揚げる→8月終わり?〜2ヶ月くらいで干した昆布を↑のようにして出荷。他にもタコ漁をしているらしいが、以前はイカも取っていたらしい。でも、養殖昆布をしはじめると手がかかるのでイカ漁は辞めたそうだ。

ちなみに今年、旦那さんの場合で39本のロープに昆布の赤ちゃんをつけて海に沈めたらしい。それが今年は天気がよく順調に割りと干せたらしく、12回の作業で終了したとのこと(わたしは途中参加だったから多分6回?かな。思ったより昆布を干す回数が少なくてびっくりした)。去年は雨が多く、7月19日までかかったそうだ。沈めたら沈めっぱなしではなく、ときどき昆布の様子を沖まで見に行ってチェックをしているとのこと。

素朴な疑問がわたしには湧いた。

@なぜ、ロープの数は40本ではなく、39本と中途半端なのか。

「40本越えたら俺はキツイな〜」

Aそうだんなさんは言ったけれど、なぜ、もっと昆布のロープを多くして出荷する昆布の量を増やさないのか(どうせやるなら、とシロウト的には思ってしまうのだけど)。

Bなんでみんな「早く昆布干し終わらせたいなぁ〜」としきりに言うのか。8月とかに食い込んだら何かマズイことでもあるのか?

牧場にいた奥さんと、ここの奥さんはとてもよく似ている。

牧場の奥さんは「自称・熱血酪農家」だと言っていたけど(笑)、本当に頭がよくて、物知りだった。頭が本当にいい人というのは、わからないと言う相手の質問に、噛み砕いてわかりやすく教えてあげることができる人だとわたしは思う。どんな質問をしても、奥さんはいつもわかりやすく教えてくれた(だんなさんももちろんいろんなことをわかりやすく教えてくれたけど、奥さんといる時間が多かったので奥さんに訊くことが多かったのだ)。

ここの奥さんも「熱血昆布干し人」だとわたしは内心思っていたのだけど、いろんなことを教えてくれた。沖のことはだんなさんしかわからないのでだんなさんが教えてくれた。面倒くさがらないで、いつも説明してくれたこと、本当に感謝します(;∀;)。

まず、39本という中途半端なのは、3本セットで海にロープを沈めるので3の倍数がいいから。2本とかだとバランスが悪いらしい。

AとBの答えは似たようなものだった。

「かおりちゃんが昆布干してたときに、中には毛が生えているのがあったでしょ、くもの巣みたいな」

あぁ、あぁ、ありましたありました。しっぽのヒョロットしたあたりに500円玉大のくもの巣みたいなのが。

「あれね、一種のプランクトンなんだけど、揚げるのが遅くなると、どんどんどんどん昆布の中(表面?)で成長して、しっぽから頭の方に向かって大きくなっていくんだ。途中間をあけて、頭の方へ飛んで、最後には上下から昆布を蝕んでいく。だから、もう7月下旬でもヤバイくらい。海に行って様子は見ているけど、ひどくなるとスパッと切り落としたり。もちろんそのまま引き上げて、乾かして網目みたいなのを削って出荷することもできるけど、商品価値は下がっちゃうし、俺はそういうのはしたくないから。でもね、昔はこんなのなかったんだ。だから温暖化で水温が上がって、そういう影響もあるのかなぁ」

メモってないのだけど、「ヒドロゾア」と言っていたような気がする。

なのでつまりのところは、6月下旬〜7月20日くらいまでに無理なく干せる量の昆布を養殖するのだそうだ。すごいね、訊いてよかった。知らないことだらけだよ!!

ちなみに、昆布の干し場には、「砕石(さいせき)」タイプと「笹」タイプがあったりします。

笹の干し場・こんな感じ

Kさんちの3つの干し場は全部「砕石」なんだけど、この石も買ってくるのだそうだ。お隣の干し場は笹が敷き詰められていて、訊いてみたら、笹の葉の上に干すほうが昆布のツヤが全然いいそうだ。昔はKさんちも笹だったらしいのだが。じゃぁ、どうして笹じゃなくって石にしちゃったのだろう。

「笹は山にみんなで採りにいって敷くんだけど、笹だと、雨が降った後になかなか乾かなくって干せないんだよね」

石は石で、毎年薄くなったところに砕石を買ってきて足すのだそうだ。でも、買ってしばらく寝かせておかないと、昆布を干したら石の白い粉がついてしまうそうで、他のうちではそんなことしないそうだが、Kさんちではそんな年は一本一本干した昆布を拭いていくそうだ。

メバルの煮つけや、なまこなんかのまた美味しいご飯を頂きながらこんなことを教えてもらった。

お昼からはしばらくは使わない乾燥室のお掃除をしたり、お日様行きだった昆布ちゃんたちを取り込んだり。

昆布ちゃん、ひなたぼっこ

「かおりちゃん、あれ、見たことないっしょ?」

奥さんが指差してくれた車。ん、普通にゴミの回収の車じゃないのか。

「あれね、ウニの殻専用の回収車なんだよ」

へぇ、そうなんだぁ。訊けばウニシーズンには毎日来て回収してくれるそうだ(車は本当に普通のゴミ回収って感じ。仕事をしていたので写真は撮れず)。ゴミは、ナイロンに入れているとカラスにやられるのは必至なので大きなカゴに入れられ、上に板でフタをしていた。

終了したらKさんちに上がりこんで、近所の奥さんが焼いて頂いたというパンケーキや、とうもろこし、礼文島のお饅頭をたらふく頂く。ぐふふ。しかもだ、お土産までもらってしまった。きゅうり・こんぶ・タマネギ。

やった、野菜だ!

ありがとうございます、ありがたく頂きます(喜)。
途中から昆布干しに参加させてもらったけれど、Kさんちでよかった。実際、まだ終わっていない他の昆布干しのお家の人からのお誘いもいっぱいある。でも、Kさんちだけで十分だ。

「また利尻においでね。結婚したら新婚旅行でおいで、昆布干しに。部屋も空いてるから」

そう言ってくれるおばあちゃん(笑)。ありがとうございました。

「重たい仕事ばっかりさせてごめんね。でも、最後になると年だから身体がしんどくて。本当に助かったよ」

「助かった」

ただ、その言葉だけでもう、十分だ。

何かの、誰かの役に立つこと。これが、仕事をしていたときにあって、旅をしていたときに感じることが出来なかったこと。これがなかったから「がんばる」というコトバがなかなか出てこなかった。でも、今日も暑かったし、最後の方は、運んでいたらずっしり昆布が重く感じた。でもお世話になったおばあちゃんたちの役に立ちたいから、一生懸命頑張った。

ずっと、礼文や利尻へ来るまで、こういう気持ちが恋しかったんだと思う。

楽しいとか、感動したとか、そういう気持ちはいっぱい持つことができたけど、「一生懸命」って楽しんでいるときには出てくるのが難しかったりする。一生懸命、なのかもしれないけど、そういう言葉を使うのを躊躇していた。

でも、島に来て、「一生懸命」がいっぱいありました。だから今、すごく心の中が満たされています。

利尻の昆布、おいしいよ。


画像の説明がいところは、クリックすると大きくなります。


←前の日へ  ★★★★★  次の日へ→