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2005年8月30日(火) はれ <142日目>
出発地:北海道のとある牧場(道東) 現在地:北海道のとある牧場(道東)  
走行距離:0km ★ 計:15709.8km 出費:0円


北海道・牧場生活2日目。



昨日はだんなさんや奥さんと11時近くまでおしゃべりしていたけど、なんとか4時半に起床。早速ツナギに着替えてパーラー室(搾乳室)へと向かった。少し霧が出ていて、まだまだ夏の早朝という感じ。ひんやりしていて鼻を通る空気が気持ちいい。

「おはようございます」

すでに搾乳は始まっていて、だんなさんは別の仕事があるので、朝の搾乳をお手伝いに来ているおじさんも含め奥さんと3人で搾乳。搾乳は、朝夕と1日2回。

「つなぎ牛舎」という、一般的に牛が空の下に放牧されている形式(昔ながらのやや小規模的)のものと、ここの牧場のように「フリーストール」という新しい方法(アメリカによくあるタイプの比較的規模が大きい)乳牛の飼い方には2種類ある。

フリーストールでは、牛は外に放牧されることはなく、牛舎内で牛は人生を送ることになる。つまりお日様の下に出ることはないのだ。ちょっとかわいそうなようだけど、牛舎内ではつながれることなく、柵内で一日中自由に動き回れるのでその点いいのかもしれない(牛じゃないからわからんけど)。つなぎ牛舎では日中外に出れるけれど、牛舎内では繋がれ、居れる位置が決まってしまう。

わたしの中では、

家の中で犬を飼っている感じ=フリーストール
家の外で鎖につないで犬を飼っている=つなぎ牛舎

というイメージである(あくまでわたしの場合ね)。

つなぎ牛舎の場合、乳搾りをするときには人間がつながれている牛のところへいって乳搾りをするのだけど、フリーストールの場合は牛を待機所へと連れてきて、片側8頭づつ、一回で16頭づつ入場させて搾乳するのである。つまりフリーストールの搾乳は、牛の方々に来てもらう、というやり方なのである。

牛、待機
「まだかよ?モウモウ」
牛、入場前のパーラー室

ここの牧場は牛は5つのグループに分かれていて、それぞれのグループの部屋があり、そのグループごとに順番に搾乳をするのだ。

1:初産牛(初めて子供を産んで乳牛になりたての牛)
2:経産牛(何度も子供を産んでいる牛)
3:出産後まもない牛

4:乾乳前期(大体分娩2ヶ月前〜3週間前)
5:乾乳後期(大体分娩3週間前〜分娩前)

4と5の「乾乳」とは、2ヶ月前からおっぱいに注射をしてお乳が出ないようにしている牛のことです。朝夕、おっぱいを出すということは牛にとってとっても疲れて大変なことなので、お仕事をお休みして赤ちゃんを産むために体力置いておくのですね。人間で言えば、産休ですね。

なので、搾乳をするのは1〜3のグループだけになります。

なぜ、乳牛が「1年1産」かというと、また次の世代の乳牛を産んでもらうためもあるし、産んだ後、大体2ヶ月目ぐらいが乳量のピークを迎え、徐々に搾られる乳の量が落ちていくのですね。だからまた乳量を上げてもらうために妊娠してもらい、出産してもらうのです。

ちなみに100%人工授精で、精子カタログたるものもあります(爆)。いいオス牛の精子があれば、それを使うことが多いので異母きょうだいが同じ時期には多かったりします。

・・・果てしなく長くなりそうなのでとりあえず話は終わり(また今度ね)。

とりあえず100頭ちょっと搾乳に約2時間。それから牛がうんちしまくったパーラー室を掃除したり、えさ場のえさが散らかっているのをほうきで掃いたりしつつ、奥さんと子牛のボビーのところで遊んでいた。

するとJAの牛回収の人がやってきた。おお!なんていいタイミングなんだ。

乳牛はもちろん出産を終えてミルクを出すメス牛だ。だから、乳牛農家に必要なのは女の子。オス牛は乳牛農家には必要でないのだ。後継者として必要なのはメス牛だから。100頭以上居る牛は子牛以外みんなメス。

・・・ここは女の世界なのである、キャッ。

何とこの最近オスの連続でハッチにいた5頭すべてメンズとのこと!メンズは生後2週間ほどして足つきがしっかりしたら、肉牛農家へと売られて行く。その回収屋さんが今日来たのである。

♪あ〜る晴れた昼下がりぃ〜・・・(この後何でしたっけ?)
荷馬車がゴトゴトォ〜子牛を乗せてゆくぅ〜
かわいい子牛ぃ〜売られてゆくよぉ〜

そう、ドナドナの世界。今、ここに!(衝撃の事実、謎)

@ヨイショヨイショと
トラックの近くに連れていかれます
Aベルトに吊るされます
ひぇー!

Bさらに上げられ体重測定です C測定後さらにさらに上げられ
トラックの中に入れられます
(ドナドナ完了)

今日は3頭のメンズがドナドナになったのですが、みんな体重測定のときにチビっていました。ちなみにこのJAの回収屋さんでの値段はキロ600円であります。今日のメンズは生まれつきでかかったらしく、58〜63キロの間でした(だいたい50kgちょっとが多いから大きめです)。わたしが居た頃は、すごく高いときでキロ1200円とかだったのに、今や半値。それでもアメリカ産がまだ入ってきてないのでマシなほうらしい。

市場でセリにかけられると見てくれで値段が変わるのでいくらになるかはお楽しみって感じなのです。ボビーくんのような黒毛和牛とホルスタインのハーフの場合はJAの回収業者にではなく、市場に出されます。

そしてトラックは去っていく。立派な肉牛になるんだぞー!

「それにしても奥さん、わたし前にいたときは気づかなかったんですけど、子牛を体重計に吊るす前に回収の男の人が子牛のおしりの辺りを触って”オッケーです”って言ってたんですけど、あれって何してたんですか?」

「あ〜あれね、
カタチンじゃないかどうか見てたんだよー。カタチンだとダメだからね。」

「え?カタチンって何ですか?」

「タマタマがひとつだとやっぱりどうも男らしさが足りないらしくて良くないんだよね。片方しかないってことだよ」

「つまり片チンってことなんですね。オトコはやっぱりついてるものはついてないとダメだってことなんですね」

「そうそう、そういうこと」

な、なるほど。オトコも大変だねぇ(;・∀・)。やっぱりよく見ることは大切だ。発見があってちょっとうれしかったり(照)。カタチンだとJAでは引き取ってくれないので市場に出されるそうだ。もちろん、値段は安くなるらしい。

9時ごろに朝ご飯を頂き、少しゆっくりしてから、だんなさんが牧草を3ヘクタールほど刈るそうなので一緒に大きなトラクターに乗せてもらうことにした。えへへ〜☆広い広い敷地。そこに牧草のタネを蒔いて育て、夏に刈り(お盆頃〜今は2番牧草の時期)、一年分の牛たちのご飯を作るのだ。

出発進行! 刈られた牧草が自動的に
一箇所に集められ列ができる

ロボットのように大きなトラクターに乗っていると気持ちがよかった。だんなさんにいろんなことを教えてもらっていると、この辺りにはギョージャニンニクも生えるし、動物もいっぱい現れ、タンチョウ、エゾシカ、キツネ。そしてさらには最近クマまで出現したとのこと(汗)。

牧草を次々と刈っていると、大きな鳥がやってきた。

「あの鳥って何ですか、ワシみたいなんですけど」

「あれね、トンビだよ。牧草を刈ると、カエルとかが出てくるからそれを狙ってトンビがやってくるんだよ」

おお、あれがトンビ!名前は知っていてもどんな鳥だか見たことなかったからなぁ。想像していたのより随分立派な鳥なんだね。

ついに乳T登場

トラクターを降りると刈られた牧草が規則正しく列を作っていて、若々しい草のにおいが一面にした。夏だ!!

ハーベスターにて草回収 そしてこの場所に集められ
空気を抜くためにトラクターで
固められる

お昼からはこの牧草を回収。

賢い機械は、草を刻むと同時にギサン(牧草がいい感じに発酵するための液体)を吹きかけながら牧草を回収していくのだ。ちなみにフリーストールでは大体は牧草ロール(草を巻いたコロコロ)ではなく、こうして刻み、集められ、トラクターで固く踏み固められ、ビニールシートを被せ、重石がわりのタイヤを乗せて最低60日発酵させて「サイレージ」という1年持つ保存食を作るのだ(→右写真の左側のような感じになります)。

早く言えば、「お漬物」のようなものであります。このサイレージにトウモロコシなどの飼料をマゼマゼしたものが牛たちのご飯になのですね。

こんな感じで食べるので
牧草ロールではないのです

3時半頃からベッドメーキング(牛たちの寝床掃除)をしてから夕方からの搾乳です。

そしてモモコ、ラクガキされる

・・・やったのは奥さんです(笑)。

牛もみんな4本乳が搾れるわけでなかったり、乳搾りにものすごく時間のかかるシブイ牛、今は出荷できない乳を出す牛もいたりして緑と赤の足のバンドやスプレーでマーキングしているのです。ももちゃんは何も問題ない牛なんだけどね。

「これでどこにいてもモモちゃんってすぐわかるよね(笑)」

うむ、確かに。ももこは何も気がつかず、やっぱりハムハムしていました。


画像の説明がのものはクリックすると大きくなるか、違う画像が出ます。


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