【考】:クルマ旅 T

今まで日記にも書いていなかったことをツラツラ書こうと思います。
ハイ、そこ!!笑いは期待しないように(;・∀・)!
■ジムニー■

「何でジムニーなん?」

と訊かれることはあっても「何でクルマなん?」と問われたことはなかった。それだけ、クルマ旅というものは多くの人にとって浸透しているということなのかもしれない。

とは言うものの、わたしにとってクルマというものはあくまで移動手段の一つに過ぎず、睡眠までとれちゃう「宿」にまでは成り得なかったので、深夜の夜行バスを除いて、車で眠ったことなんて一度もなかった。

・・・よく驚かれるのですが、本当なのです。

まず、「何でジムニーなん?」という質問にお答えすれば、「乗りたいクルマ(ジムニー)が、替えてもいいなぁと思っていたときにタイミングよく現れたから」ということになる。

2004年10月の話。旅に出るちょうど5ヶ月ほど前のこと。

そのときわたしが乗っていた車は550ccのクルマ。愛媛に戻ってきたときにその必要性を感じ、友達に相談を持ちかけたところ、得意先のおじいちゃんがもう乗っていないからとクルマを奪ってもらって来てくれたのである。もちろん無料で。11年物で走行距離はわずか3万キロ。部品交換をしてもなお、バッテリーが上がりやすいというのと、エンジンがかかりにくいという難点もあったし、あと半年で車検だったので、いいクルマがあったら替えたいなぁと思いつつも、実は1年半乗ったこやつで旅にでようとも思ったりしていた。不安は大きかったけれど。

そんなときに突然ジムニーが現れた。

友達の友達ができちゃった婚をすることになり、ジムニーを手放すことになったのである。ちょうどその何ヶ月か前に「ジムニーみたいなクルマ、出てこないかな」と友達に言っていたのだ。希望は思うだけでなく、口に出して言ってみるものである。どこで誰が聞いていてくれるかはわからない。

ジムニーの何が好きなのか、と訊かれたら「角ばったあの形」・・・その一言に尽きる。現行のまるっこいのはあんまり好きじゃない。ちょっと前の、あの少しレトロ感の残るあの車。別に改造したいわけでも林道を走りたいわけでもない。マニアなんかじゃない。クルマに詳しくもない。ただあの形がすきなのである。

「色は?」と訊くと、友達は「緑」だと言った。

んーと思いながらも、一度見に行ってみることにした。山の緑は好きだけど、車の色の緑は好きじゃない。「緑・・・んー緑はなぁ・・・シルバーやったらよかったのに」

わたしの前に現れた緑のジムニーは、わたしの中の「ミドリ」ではなく、一見、黒や紺にも見えそうなわたしが好きな深緑だった。かっこええやんか!!

「ちょっと乗ってみてええ?」

わたしは、友達の会社の駐車場で、生まれて初めてジムニーに乗った。

どきどきしながら乗り込むと、車高が高くて、ちょっと強くなった気がした。猫の額ほどのフロントガラスから見えたワイパー。

「ねぇ、右のワイパー、これ曲がっとらん?クネってなっとる」

「フロントガラスが小さいけん、そうなっとるだけやろ。動かしてみー大丈夫やけん」

クルリと捻るとワイパーは正常に動いた(恥)。エンジンの音もよかった。

平成6年式のJA11型。WILD WIND。走行距離80000km。足回りは良好。エアコンも良好。タイミングベルト交換済み。車検は1年半の残り。MDデッキ付き。

「ちょっと2、3日考えてもええ?」

38万円を次に友達に会ったときに渡した。値切ることもせず、いい値で買った。一目見たときから、こうなることは決まっていたのだと思う。

実は、知る人ぞ知る、直子もジムニー(平成7年式・LAND VENTURE・シルバー)に乗っていて譲ってもらうという説も浮上していたりしたのであった。結局は不具合が多く、話は流れたけれど、今でも直子はジムニーに乗って和歌山で暮らしている。

2台並べると胸をくすぐられる。かわいい。

■周■

さて、ジムニーを手に入れたものの、職場のみんなからはこんな言葉の嵐だった。

「せっかく日本を旅するんやけんもっとええクルマにしーやー」
「8万キロ?絶対壊れるけん」
「行って帰って来れるわけがない!」
「あのクルマで寝る?ムリやろ」
「えー一人?信じられん」

まだ言われた気がするけど、多すぎて思い出せない(笑)。言われるたびに「何でそう思うん?」と訊き返してみるけれど明確な答えは返ってこなかった。ただ、こう言った人が一人だけいた。

「軽やし、ナビもないけん」

軽自動車でも立派な車だし、ちゃんと走ることだってできる。ナビがなくても地図帳があるし、人に訊ける口も、方向を確かめることができる目もありがたいことに、わたしにはついている。

色々言われて、「なにをー!」だなんては思わなかった。
ただ、そう思う人が多いことにただ驚いただけだ。みんな意外とネガティブなんだな。

幸いだったのが、「クルマで日本を巡りたい」と言ったときに、親が(いつものごとく)「ふーん」で終わったことである。ただひとつ「どこで寝るん?」とだけ訊いてきた。

■親■

「あんたがえらいんやなくて、親が偉い」

とはよく的を射た表現だと思う。

そうなのだ。
わたしの旅を許して、黙って見守ってくれた周りの人がいちばん偉いのだ。
なぜなら「ダメ」と言われていたならわたしは旅に出たかどうかわからないし、仮に強行軍で出たとしても心のどこかで引っかかって旅を楽しめるはずがないからである。人はどうかは知らないけれど、わたしはそんな人間だ。やましいことがあると、ちっとも楽しくない。

どこかに書いたと思うけれど、わたしが思う愛情というのは「受け入れ、許す」ことだと解釈している。だとするならば、わたしは大きな愛情で多くの人に守られていたということになる。

「ほら●●とかあるやん、あそこを道の駅っていうんやけど、一般道路の休憩施設で、クルマを止めれるみたいやけん、そこで寝ようと思うんやけど。あと、テントも持っていくし。北海道はキャンプ場に泊まると思う」

母は「ふーん」と言った。「いつ頃帰ってくるん?」

「7月とか8月くらい?(;・∀・)」

母は「ふーん」とだけ言った。「スピードはださんようにね」

今まで旅に出るときも「行ってらっしゃい」としか言われなかったのに、今回だけはこんなことを言われた。

「人に迷惑をかけられんよ。途中で止めて帰る勇気も必要なときもあるけんね」

今まででいちばん長い旅になり、バスやJRや飛行機ではなく、自分で運転する車で旅立つ娘へ。

鉄の塊は、簡単に人を傷つけることも、殺せてしまうこともできてしまうのだから気をつけるように、嫌な予感がしたら意志貫徹しなくともいつでも帰ってきなさい、ということが言いたかったのだと思う。親として。

こうして外に出してもらっているのだから、夜、ウロチョロ歩き回らないとか、安全運転をするだとかは最低限守らなくてはならないことなのだ。なぜなら信頼されて送り出されているから。誰かを傷つけることも、自分が傷つくこともダメ。元気に戻らなくてはならない。「戻りたい」とか「戻ると思う」じゃなくって「戻らなければならない」のだ。

わたしはちゃらちゃらしている人間だし、バカなことだってする。
人は知らない。

でも、わたしはそう考える。

だから、安全運転じゃない人には腹が立つ。

わたしは車のことは何にも知らない(おぃおぃ)。
だから、オイル交換はしっかりしようと思ったし、そのときは点検もしてもらおうと思った。無知なわたしが最低やらねばならないこと。

■クルマで眠る・最初の1ヶ月■

アメリカを約1ヶ月でグレイハウンドというバスでざっと一周したとき、わたしは何度も深夜便を利用した。

●眠っている間に移動できるという点。
●宿泊費が浮くという点。

その2つが大きな理由である。

日中の太陽の下で、雄大な景色を見ることができないのは残念だが、日中にもバスに乗ることが多かったので、それほど自分にとってはマイナス要素にはならなかった。

バスの中で眠れないことも多々あった。

隣の人が大きすぎる(圧迫される(爆)アメリカには信じられないほどでかい人が普通に存在するのである)、エアコンの風が冷たすぎる(真冬なのに冷房のときも!)、姿勢がしっくりこない、など。考えられる理由はいろいろあったけれど、窓側の席を確保できたらほとんどの確率で安眠ができていた。わたしにとって、首の位置(窓側の場合、窓に寄りかかって眠るのだが、首とガラスの間にフリースを挟んでおくとわたしの場合ちょうどよいのである)はとても重要。

出発前にジムニーのシートを倒し、転がってみた。仰向け、左横、右横・・・

「うん、眠れる」

そう思ったから、そんなに不安でもなかった。右横になって丸まってみたら大丈夫だった。

自分ひとりで運転するとなると、寝ている間に移動できちゃうというメリットはないけれど、宿泊費がかからないという点はやはり大きい。誰かに気兼ねしなくていい、いつでも到着・出発できる、動物を連れている場合など特に宿探しの心配が要らない、など、いろいろあるだろうけれど、宿泊費がかからない(有料駐車場の場合必要なときもあるだろうが)のは車中泊をしている人のほとんどの理由のトップだろうと思う。

車旅をしたことないわたしには、一体どれほどのコストがかかるのか全く見当がつかなかった。当初は4ヶ月(120日)の計算で、17000km走行、一日の旅費を5000円と考えていた。

つまり、120日×5000円=600000円である。

もちろん今までの自分の旅のスタイルを考慮し(どんなものに興味があって、どんなものにお金を使いそうかとか)、ゆとりを考えての計算だったし、5000円もかかるとは実際は思ってはいなかった。予定外の出費もあるだろうから、それ以上の準備はもちろんあった。

けれど、とりあえず1ヶ月は抑えれるであろうもの(特に食費・宿泊費)は抑えたいなと思っていた。とはいえ、車中泊にこだわるつもりも全然なかった。体を壊したら何の意味もない。泊まりたいとその日の自分が思えば、民宿やユースホステルももちろん利用するつもりだった。

最初の1ヶ月は手探り状態。

結果的に言えば、最初の1ヶ月、すべて車中泊。

単純にクルマで眠ることについての不安なし、ということが判明したのはわたしにはそれがいちばん嬉しかった。

ただ、
●他の車がいない
●携帯が圏外
●民家から離れているところ
この3つが重なったところだけは止めておこうと思った。

絶対ダメなところは、駐車場にキュルキュル跡のあるところ。うるさくて怖くて眠れなかった。それと何故かわからないけれど、自分が嫌だなーと感じるところ。何故嫌だなーと感じるのか、明確な要素は自分自身にもわからないけれど、そう感じるときは気持ちが悪いので素直に避けていた。

あとはトイレや自販機の直ぐ側。一見便利そうだけれど、夜中でも利用が多く、ドアの開け閉めでうるさくて眠りにくい。わたしは基本的に運転席を開けるときに気を使うのがイヤで専ら端っこを好んでいた。

いいところは、温泉が併設されている道の駅。こういうところは大抵、駐車場も広く、県外ナンバーの車中泊をいかにもしそうな人たちが多く安心できる。お風呂に入ってすっきりしてから眠れるという利点もある。道の駅を調べるときは、温泉併設かどうかプラス駐車場の収容台数も見ると、予想が立ちやすいと感じた。

あと、観光費はともかく、食費、駐車場代は努力すればもうちょっと抑えられると思ったし、ガソリン代も値段の書いてないところでは入れないほうがよいということがわかってきた。目を吊り上げてキツキツなのは楽しくない。でも、そうならなくても1ヶ月に4000円もかかっていないことが判明した。これは精神的に大きかった。

一応3〜4ヶ月とは思っていたけれど、別に期限がある旅でもなかったから。使ってもいいな、というお金が途切れるまでは旅をしようと思っていた。わたしの場合、1日のコストを抑えれば、それだけ長く旅ができるということだったので、そのとき節約すると未来の旅プランも大きくなっていったのである。

それもひそかに楽しかった。


参考:結果的に【旅の費用】は平均1日あたり3184円となった。北海道で増えたお金を考慮すると1日あたり1530円ということにはなりますが。増えたお金から家にお土産を送っていたり等、特別出費もあるので単純には計算できないんですけどね。ジム旅データのまとめはコチラからドウゾ。



【考:クルマ旅 U】へつづく・・・