【考】:タビ

わたしの本家のHPのグレイハウンドでアメリカを一周したときの旅日記の冒頭にこんなことが書いてある。

わたしの持っている旺文社国語辞典にはこう書いてある。

たび:仕事ではなく自宅を離れて遠方の地へ徒歩や乗り物で行くこと。旅行。

りょこう:一時的に離れた土地へ行くこと。旅に出ること。たび。

つまり、旅行=旅ということらしい。でもどうしてだろう。

バックパッカーが「旅」なら、スーツケース持った人は「旅行」のような気がする。

1回のバスに乗ろうか、歩こうか迷ってる人が「旅」なら、たくさんの買い物袋かかえた人は「旅行」のような気がする。

出会う人がみんな新しい友達や、知り合いになるのが「旅」なら、友達とずっと一緒に居て楽しむのは「旅行」のような気がする。

事件がもりだくさんが「旅」なら、困った時にいつも誰かそばに居るのは「旅行」のような気がする。

どうしてそう思うのだろう。そう思うのはわたしだけなのだろうか。

旅と旅行。

沼と池って同じなのかな、って思うような感覚で、でかけることの好きな人は一度はその違いについて考えたことがあるのではないだろうかと思う。でも、辞書に書いてあるとおり、きっとそこに違いはない。

違いがないとわかっていながら、諦めの悪いわたしはやっぱり違っていて欲しいと願うのである。なぜって?それは単純なことだ。「旅行」より「旅」のほうが、響きがかっこいいから。

【一人旅】とは言うけど、【一人旅行】とは言わないじゃないか。
【団体旅行】とは言うけど、【団体旅】とは言わないじゃないか。
【二人旅】とは言っても、【三人旅】とは言わないじゃないか。

わかっていますってば。
【女子トイレ】とは言っても、【女性トイレ】や【娘トイレ】とは言わないのと同じだって事は。

じゃぁ、お前はどう思うんだ、と訊かれてもなかなか即座には答えられない。
上のように書いてはいるけれど、それは6年前のわたしが書いたことである。

感覚だとか、考えなんていうものは、時が経つにつれて、自分が成長するにつれて、いろんなことを体験するにつれてどんどん変化していくものだ。もちろん、変わらない事だってあるだろうけれど、変わったっていい。

実際、6年後の自分が、上にある文章を読んだときに、ちょっと違うなぁと既に今、思うのだから。ジム旅の日記だって既におや?と思うところが何箇所もある。でも、それでいいと思っている。

なぜならこれは【日記】だからだ。その日の自分にしかわからない想い。思ったことをうまくは書けていないかも知れないけれど、そんなことを思ったことは確かなはずだ。未来のわたしがあーだこーだ言えるはずもない。

さて、旅と旅行。

どんなイメージがあるだろう。

【旅】
人数は少なめ、さすらい、放浪、無計画、バックパック、自炊、節約、長期、自由、責任、変更可能、出逢い、ゆったり、まったり、お好きなように、資金を溜める、苦・・・

【旅行】
団体、バカンス、おいしいもの、添乗員さん、バスで移動、スーツケース、高級ホテル、時間厳守、いいとこどり、わいわい、お買い物、誰かの後ろ、お盆、正月、ボーナス、楽・・・

なんとなくイメージを取り上げてみたけれど、どちらにもあてはまるであろうこともある。うむ・・・言葉にすることがいかに難しいことか。

では、ひとりでないと、旅ではないのか。

と訊かれると、わたしは「一人でも、二人でも旅だ」と答えるだろう。

一人の旅人と、一人の旅人が出会い、行動を共にすると旅行になるのか。

と訊かれたなら、「いや、一人旅+一人旅=やっぱり旅」だと答えるだろう。一人旅の人と二人旅の人が出会ったって同じだ。

旅は何日からかと尋ねられたら。

「一日でも旅だ」と答えるだろう。

きっと、スーツケースを持っていたって。高級ホテルに泊まったって。二人だって。

でもそこには付加するものがある。

自分(たち)のオリジナルなものであれば、だ。
自分(たち)が決めて、自分(たち)で考えて、自分(たち)で責任をとって行動するものなら。

誰に決められて、何時何分にどこどこに行く、決められたスケジュールに従って、ついていくのが旅行ならば、自分(たち)に全ての決定権があるものが旅だとわたしは考える。旅行は商品として売られていても、旅ってどこにも売られていないんじゃないか。旅っていくらでも自由につくりあげられるもの。粘土のように。

おーそうだそうだ!とここまで書いてわたしが言いたかったのはこれだと勝手に納得。

だから旅には自分(たち)以外、同じ期間、同じルート、同じ天気で旅をした人はきっといない。「唯一のもの」。それを旅であると呼びたい。

そもそも、その2つは同じなのだからあーだこーだと言うのはおかしいという人。
徒歩だけが旅。あとは全部旅なんかじゃない。
人力だけが旅。
一人であることが旅の条件。

・・・いろんな「タビ」ってあると思う。

人によってそんなの違って当たり前。同じだったら気持ち悪い。違うから面白い。感じ方も、進み方も。プライドを持つのは勝手だけど、人力で周った人がえらいとか、節約したからえらいとか、長い間タビをしたからえらいとかはちっとも思わない。「正解」なんてないのだから。

人それぞれなのだから、それぞれでいい。人の旅を受け入れられないほど、わたしは小さな人間じゃない。mixiでみかさんという方とお話をしたことがあるけれど、「タビって(自分が)するのもいいけど、(誰かの)タビを受け入れるのもいいよね」と。

旅にでて、やさしさをたくさんもらいすぎて困惑していたわたしに

「旅人は人の心に灯をともすのだから」

とおっしゃってくださった方がいた。やさしさをもらっているのはあなただけじゃないよと。このわたしだって旅をしているあなたからたくさんのものをもらっているのだと。自分が旅をしているときに、そう思うのは意識過剰なのではないかと思ってしまい最初は素直にそうは思えなかったけれど、その言葉の意味がだんだんわかってくるようになった。誰かの旅に遭遇したときに、その言葉の意味を強く感じることができた。

自分で稼いだお金で、自分の人生の時間を使うなら、そんなの楽しんだものの勝ちに決まっている。どんなに楽しんでいるのか、こんな楽しみ方もあるのかと、すごく興味があるからわたしはきっと、旅人の旅日記を読むのが好きなのだと思う。

うらやんでも、きっと同じ「タビ」には出られないから。
同じことを感じることも、きっとできないから。
それは自分も同じ。
だから、わたしはここの管理人なのだと思う。

ちなみに、旅日記はみんな集まれ!のトップページでリアルタイムものを読めるほか、オススメはすでにゴールされている方のリンク集。こちらコチラ。おもしろいものは・・・と紹介したい所ですが、ヒイキじゃん!って言われたら辛いので(;・∀・)、止めておきますね。お気に入りのタビをどうぞ。自分はできないなぁ、と思いながら読むのも楽しいものでして。


2006.7.18